SCEのエグゼクティブ・バイスプレジデントの伊藤正康氏へのインタビュー記事が公開されています。伊藤氏はSCEのハード、ソフトの開発部門のトップであり、PS4の4K/HDR対応の検討状況、高性能版PS4の可能性など、いろいろと興味深い内容となっています。
西川善司の3DGE:PlayStation事業の戦略軍師,SCEJA伊藤雅康氏に聞く,PS4進化の方向性。高性能版PS4は登場するのか? - 4Gamer.net
PS4の4K(Ultra HD Blu-ray)対応は戦略を含めて検討中
伊藤氏:現在,Ultra HD Blu-rayに対する対応方針は,目下検討中なのです。これはあくまで「たとえば」の話として聞いて欲しいのですが(笑),Ultra HD Blu-ray対応可能な上位モデルを設定するという対応の仕方は考えられます。ただ,その決断をするためには,「上位版PS4が何台くらい売れるのか」「価格はどう設定するのか」などを慎重かつ多角的に予測・検討しなければなりません。今は,そうした戦略の検討中ということです。
PS4のHDR対応は積極的に検討中
伊藤氏:実はですね。4Kはともかく,PS4でHDRの対応はしなきゃいけないかなぁ,とは思って検討しているんですよ。Ultra HD Blu-rayの発表の影響で,HDRは4Kとセットで考えられがちですけど,HDMI 2.0aの規格上,HDRを1080pと組み合わせることには何の問題もありません。ゲームグラフィックスにHDR表現を加えることができたら,さらに進んだ映像表現ができるはずなんです。
PS4のオブジェクトベースオーディオ対応も視野
伊藤氏:もう1つ,進化の方向性で検討しているのは「オブジェトベースオーディオ」への対応ですね。これについても対応への議論を重ねています
高性能版PS4の可能性
伊藤氏:「具体的なことは申し上げられない」と前置きをしたうえでお答えすると,x86アーキテクチャを採用した以上,そうした「必要なタイミングでの性能強化」は考えています。つまり,可能性はあるということです。むしろ考えていかなければならないでしょうね。PS3では,当初の思惑とは異なり,結果的に世代交代が難しくなってしまったCellアーキテクチャを採用したことから,商品バリエーションというと,「HDDの容量多寡」でしか展開できませんでした。しかし,コンベンショナルなx86アーキテクチャを採用したPS4であれば,過去のゲーム資産を継承しつつ,柔軟な性能強化を図ることは容易です。たとえばですが,スタンダード性能版PS4と高性能版PS4を提供する,そういうバリエーション展開の可能性は,考え得るアイデアです。
Vita後継機はまだ先の話
伊藤氏:当時は20代以上の高い年齢層にしか響かなかったPS Vitaですが,今では状況が変わってきていて,低年齢層への普及が進んでいます。その後押しとなっているのが「Minecraft: PlayStation Vita Edition」ですね。ほかにも,さまざまなサードパーティ製ゲームが今後もリリースされる予定ですし,この流れをさらに加速させるべく,今秋はPS Vitaの新色をリリースすることにしました。「今後も現行のPS Vitaビジネスを継続していく」という戦略という理解でいいのだろうか。伊藤氏:はい。登場当時はハイスペックだったPS Vitaですが,いまや,最新のハイエンドスマートフォンよりも非力なのは認めざる得ないところです。しかし,アーキテクチャを変えて作り直すというのは,正直,このタイミングではどうかな……と思うところがありまして(笑)。
まとめると以下のようなところでしょうか。
- Ultra HD Blu-Rayを搭載した4K対応PS4は戦略を含めて検討中
- HDR対応については4Kよりも積極的な意味で検討
- オブジェクトオーディオについても視野
- アーキテクチャを維持したまま性能を強化した高機能版PS4が将来登場する可能性はある
- Vitaは低年齢層にも普及が進んでおり、後継機は時期尚早
数年毎にアークテクチャが一新され、普及台数ゼロからスタートするという家庭用ゲーム機のビジネスモデルから、スマートデバイスやPCに似たモデルへの転換は時代の流れに沿ったものなのかもしれません。